トップアスリートの親たちは、子供にどんな教育を施してきたのか?
これって子供を持つ親はもちろん、将来子供が欲しいと思っている人なら全員が知りたいと思っていることだと思います。その子がスポーツをやろうがやるまいが、一つの分野で大成功しているスポーツ選手に施してきた「親の教育」って、やっぱり興味はありますよね。
私にはまだ子供はいませんが、将来一緒にテニスができたら楽しいだろうなと思っていますし、やるからには強くなって欲しいなとも思っています。それは技術的なことはもちろんですが、テニス(他のスポーツでも)を通じて精神的に成長し、楽しみながら社会に貢献できる人間になって欲しいからです。
目次
テニスだけ強くても意味がないということを知った日
というのも、私が学生時代に一緒にテニスをやってきた仲間で、精神的にやられてしまって自らを断ってしまった人がいたからです。
この人は小さい頃からテニスを本格的にやっており、テニスが非常に強く、常に県で一番を取っていた選手だったのです。ですが、高校卒業後はうつ病になってしまい、30歳にならずして世を去ってしまいました。
その事実を知った当時は、「あんなにテニスが強かったアイツが何故・・?本当に分からない・・」という心境でしたね。
小さい頃からテニスだけをやっていれば確かに技術面は強くなるかも知れませんが、精神的な成長も伴っていないと将来取り返しのつかないことにもなりかねないということをこの時知ったように思います。
トップアスリートは、特に精神面で他の選手よりも強いという印象が私の中にはあります。それがもし親の教育に何らかの秘訣があるのなら、私は知りたいと強く思ってました。
そもそも杉山芙紗子という人間に大きな魅力があった
その「親の教育の秘訣」が垣間見える本をこのあいだ読みました。それが杉山芙紗子さん著「一流選手の親はどこが違うのか」という本です。
「杉山芙紗子」という名は聞きなれないと思いますが、テニスプレイヤーとして有名な杉山愛さんの実の母親であり、コーチも務めていた人です。
この方はテニスを本格的にやっていたわけではなく、単に楽しむ程度でやっていたようですが、娘の杉山愛のコーチをこなし、世界を飛び回るチームディレクターにまでなっています。そして茅ヶ崎市にパーム・インターナショナル・テニス・アカデミーを設立し、現在は校長になり、子供たちにテニスを教えています。
教え子の中にはプロにまでなる子もいるそうです。
学生の頃に本格的にテニスをやっていたわけではないのに、この実績は普通では出来ないことです。何故そんなことが出来るのでしょうか?
それは杉山芙紗子さんの「親、ひいては人としての日常での考え方、価値観、そして行動力」によるものであり、それこそが杉山愛さんが世界トップ10に入るまでになった「成長の源」であることが、本を読んだ限りでは伺うことが出来ました。
この本は錦織圭、石川遼、宮里藍、杉山愛という一流のトッププレイヤーの共通点を調べたものであり、当然私の興味は最初はそこにしかなかったのですが、
- 著者である杉山芙紗子さんの考え方
- 人間力を伸ばすような愛さんの育て方
- 紆余曲折の末に愛さんに念願のトップ10入りを叶えさせたコーチとして実績、実際にやってきたこと
- 現在も多くの子供たちにテニスを教えており、技術だけでなく、コミュニケーション力などの内面の力、テニスを通じて人としての成長を促している
そんなところを触れていくにつれ、「この人のことがもっと知りたい!」という方向に変わっていきました。
杉山ママはとにかく魅力あふれる方です。杉山ママが書いたこの本の文章にはパワーがあり、やさしさと思いやりがあります。読んでいて楽しくなります。
私はけっこう本を読む方で、自己啓発系も色々と読んできています。正直言って、成功する子供の育て方についても「多分知っていることが書いてあるだろうな・・」と思っていました。
確かに、書いてあることは私が知識として知っていたことでした。そして多くの方が知っている、もしくは触れたことがある知識でもあるでしょう。
ですが、その知識を実際に自分の子供に十分に活かし、自らも楽しみ、最高の結果まで出している。そして自分の娘だけでなく、他の成功者3人の共通点まで調べ上げ、まとめているのです。なので理論だけの本よりも断然説得力が違い、素直に腹落ちさせてくれます。
技術的な面だけでなく、普段の生活面、子供への接し方、子供の成長をどう助けていくのか、辛いことをどのように乗り越えていくのか、テニスを通じて子供にどう成長して欲しいのか、などもまとめられています。
ここまで面白く、参考になる本だとは、正直思っていませんでした。
あ、もちろん錦織圭、石川遼、宮里藍の親たちに聞いた「それぞれの子供の育て方、接し方」も非常に参考になります。楽しく読めるのであっという間に読み進めていってしまいますが、読んでいるうちに「自分の立場ならどうするか」を自然と考えさせられ、本が止まることもしばしばありました。
この本から客観的な意見を与えられ、読んでいる自分が主体となって考えるようになる。それがこの本の凄い所でもあります。
この本の読みどころ
全体的に非常に面白くて参考になる本ではありますが、その中でも見所となる部分がいくつかありました。
【P20】
「身体体力」「知的体力」「精神体力」の3つの体力をバランスよく備えることが大切という考え方。ヒンギス、ドキッチ、カプリアティなどは大会での成績は素晴らしいが、その後は様々な問題を抱えたことなどを例に挙げ、「精神体力の重要性」を説いています。
様々な本を読んできた私にとって、この精神体力の部分はとても理解しやすく、共感できるところでもありました。同時にいかに精神が重要かを再確認できたところでもあります。
【P53】
子供に対し、「待つ」ことの重要性を説いています。この「子供がやれるまでじっと待つ」ということは子供の成長を促すために必要であることは多くの親が分かっていることだと思いますが、しかし同時に親の忍耐も必要となってくるため、実践できずにいる人も多いのかな・・と思う所です。
心当たりがある方にこそ、ここは読むべき項目となるだろうと思いました。
【P98】
杉山芙紗子さんと愛さんのストーリーは全体的にかなり面白い部分ですが、中でもP98に書いている「自分のパフォーマンスを上げていくこと」は、当たり前のように思えるが見逃している部分なのかなと思えました。私の生活にも当てはまる部分がありますので、ここは心して読ませていただきました。
【P102~145】
錦織圭、石川遼、宮里藍の育て方の共通点が書かれています。ここはこの本の重要部分でもあり、何度も読み返すべき章でもあります。
特に「専門バカにならない」のところは非常にためになりました。錦織圭は小さい頃はテニスだけをしていたわけではなく、石川遼・宮里藍はゴルフだけをしていたわけではないということ。多くのスポーツを楽しんでやっていた・・という部分に深く納得したと同時に、自分が親になった時は一つに固執する教育は辞めておこう・・という気持ちにさせてくれました。
多くの親たちが気付いていないかも知れない部分でもあります。
また、P134に書いている「4人のアスリートの13の共通項目」は必読です。ここで中身を書きたいところでもありますが、軽々しく書くのも著者に失礼だと思いますので、知りたい方は購入して読んでください。
【P165】
この本はコーチとして必要となる考え方、やるべきことなども書いてあります。技術だけでなく、メンタル面の強化の重要性、コミュニケーション力、目標設定の方法などが書かれており、一読の価値があると思われます。
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他にもたくさん読み応えのあるところがありましたが、一つ一つ挙げていくときりがないため、ここらへんにしておこうかと思います。そのくらい、ためになるところが多くあり、何度も読み返そうと思えるくらいの内容が書かれている本です。
この内容の濃さにも関わらず、価格が700円台で売られています。読んだ私が言わせてもらうと、
- スポーツをしているお子さんがいる方
- 将来子供が生まれたらスポーツをさせたいと思っている方
- 子育てに少し悩んでいる方
- 単純にトップアスリートの共通点が知りたい方
このような方に非常にお勧めできる本です。
ハッキリ言って、この価格ではお得すぎると言えるくらいの「良本」だと私は思います。
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